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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第78章 【続編】幸せの続き


一月になり、新たな年となった。
光希の妊娠は九ヶ月に突入。

そして、今年は義勇や不死川が死ぬとされている年である。


年末年始は学問所も休みのため、光希は元旦を隠れ家でのんびりしていた。夜明け前に静かに布団を抜け出して、善逸と二人で初日の出を見た。
光希は赤子がいつ産まれてもいいように講義日程を組み、万全の体制を整えている。元総司令官の彼女に、その点の采配に抜かりはない。

そして彼女は善逸を学問所の代表にした。
勿論形だけの代表ではあるが、今、学問所の収益は善逸名義で計上されている。これで事実上、善逸は無職ではなくなった。

しかし、善逸は嬉しくない。
どれもこれも彼女の死ぬ準備な気がしてならない。


そんな不安を抱えた年明けだったが、愛する家族と共に迎えられたことには純粋に幸せを感じた。


「くろまめ!」

おせちの黒豆を嬉しそうに頬張るあかり。

「あかり、黒豆もいいけど、いろいろ食べなきゃ駄目だぞ」
「はぁい」
「ほら、人参」
「うぇぇ……」
「あれ?食べないの?……あかりの今年の抱負は何だったかな?」
「…………すききらいしない」
「だよね?ほら、あーん」
「…………あーん」

善逸に口に人参を入れられて、涙目になるあかり。「偉いぞ!あかり」と、親ばか全開であかりを抱きしめる善逸。善逸の目から逃れるように、そっと懐紙に人参を吐き出すあかり。
光希はその一連を見て吹き出して笑うが、特に何も言わない。

バレなければあかりの勝ち。
バレたら善逸の勝ちであかりは二倍怒られる。
それだけのこと。

善逸は善逸で子育てに奮闘し、あかりはあかりで育とうと羽ばたいている。

そんな二人のやりとりを微笑みながら見つめていた。


お昼ご飯が終わって、あかりはお昼寝の時間になった。寝かしつけていた善逸もあかりの隣でうとうとしだしたので、光希は彼に毛布をかけてやる。

「ん……、光希、ありがと」
「うん。善逸さんも寝ていいよ」
「いや、昼寝ならお前の方こそ必要だろ」
「大丈夫。眠くない」

光希は何やら机に向かっている。

「何してんの?」
「ちょっとね」

善逸が毛布を背中にかけたまま、むくりと起き上がる。

「仕事は休みでしょ?」
「うん」

光希は辞書をパラパラとめくっていた。


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