第78章 【続編】幸せの続き
「善逸さん、お待たせ」
「うん。終わったの?」
「んー…、もうちょっと待ってもらっていい?」
「いいよ」
光希は善逸に許可を取ると、「竹内さん、今日の講義日誌見せて」と資料をもらい、事務室の机に座って読む。相変わらずの速さで頁をめくって確認をしている。
資料を読みながら、別紙にサラサラと何やら書き物をしている。
「よしっ。竹内さん、明日、これ、先生たちに渡して」
「はいよ」
「みんなちゃんとやれてるね」
「ああ。お前の教え子だからな」
今、『学び舎 藤袴』には如月光太郎を筆頭に三人の講師がいる。光希は自分も講義をしながら後継の育成に力を入れている。
もしこの先自分に何かあっても大丈夫なように。急に居なくなっても皆が困らないように。
彼女のこの行動が、そう言っているような気がする。それが、善逸を不安にさせた。
……これは、死支度じゃねえのか
きっとそう追求しても彼女は笑って誤魔化すに違いない。かつての彼女がそうだったように。
善逸がじっと光希を見つめていると、竹内と話しながら視線に気付いた光希と目が合う。
「あ。ごめんね、善逸さん。結構待ってるよね」
「いや、いいよ。大丈夫」
「光希、今日はもう帰れ。後は俺がやる」
「え、でも」
「あと明日の出席確認だけだから。無理すんな。家であかりも待ってんだろ」
「うん。じゃあ任せた。ありがとう」
「おう。また明日な」
「お疲れ様です」
「お疲れ」
光希は善逸に「お待たせ」と声をかけて共に家を出る。
「身体、どう?」
「今日は調子いい。竹刀振りたい」
「やめて」
疲れているだろうに、ケラケラと笑う光希。
「遅くなっちゃった。別にお迎えなくても大丈夫なのに。あかりと居てあげてよ」
「あかりは義勇さんたちが遊んでくれてるから大丈夫。今日は晩御飯も母さんが作ってくれるって。不死川さんも来るって言ってたから、もう飲んでるかも」
「実弥さんいるなら、あかり大喜びだね」
「今日は泊まりになるかもな。大丈夫?」
「明日、義勇さん家から藤袴に行けば大丈夫だよ」
二人は手を繋いでゆっくり歩きながら話す。
善逸が迎えにくると、こうした二人ののんびりした時間を過ごすことができる。
……この幸せが続いてくれ
善逸はそっと願った。