第78章 【続編】幸せの続き
沈黙を破るように善逸が話始める。
存外に明るい声だ。
「まあ大丈夫だろ。お前の遠縁かもしれねぇけど、鬼を生み出すなんてとんでもねえことやる奴なんてそうそうでないって。それに、この先もし何かあっても、それはお前のせいじゃない」
「…………うん」
「あいつ、良い奴そうだったし」
「あ、それは間違いない。光太はいい子だよ。私の十倍頭がいいしね」
「それは言い過ぎでしょ」
「いやいや、本当だよ。輝利哉様を超える逸材だ。第一期生でね、当時十一歳だったけど理解力が尋常じゃなかったな」
光希は思い出しながら顔を綻ばせる。
「今は有名私立中学校の第二学年で、特待生として通ってる。学校始まって以来の秀才だって」
「そんな子が教鞭とってくれてるんだ」
「そう。すごいでしょ」
「うん」
「でも、自分の勉強もしたいだろうに、藤袴で授業してくれてるから申し訳なくて……」
「……そうか」
「光太、帝国大学とか目指せるから、邪魔したくないんだよね。藤袴が負担になってるかもしれない」
光希は苦しそうな顔をして俯く。
善逸は「考えすぎ」と言って彼女の頭をぽんぽんと叩いてやる。
「本人がいいって言ってくれてるから甘えればいいんじゃね?頭いい子なんだから、無理なことは引き受けねえって」
「まあ、大学行くのもお金かかるしね……、ここでがっつり稼がせてあげるのもいいかもね」
「そうそう。あの子、爽やかに笑って『大丈夫ですよ』っつってたし。昔のお前そっくりだったな。女子からキャーキャー言われるやつ」
「あはは」
「立派なお医者さんになって、沢山の人を助けるんだろうさ。心配すんな」
「そうだね、ありがと」
光希はふわりと笑うと、善逸も微笑んで光希に口付けをした。
「……こら」
「へへへ」
あかりの前で、という意味を含めて注意をするが、善逸は嬉しそうに笑っている。
「今日と明日はゆっくりしなさい。あ、そこから休みに入るからもう少し休めるんだな。家のことも何もしなくていいから、のんびりして」
「うん。ありがと」
光希はこてんと善逸にもたれかかり、体重を預ける。善逸がしっかりと光希を支える。