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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第77章 愛しき君へ


「駄目です。この子が五つになるまでです!その時あかりは八つです。貴方のことをしっかりと覚えているはず。……そこまで頑張ったら、しのぶさんのところに行ってもいいですよ」
「厳しいな」
「どんなに厳しいことでも乗り越えるのが剣士でしょ」

「ならばお前も出産を必ず乗り越えろ。俺より先に死ぬのは許さん」
「当たり前です。私は師匠からそんな柔に育てられてません」

「必ず俺に赤子を見せに来い。お前自身がな」
「承知。如月が予定日です。私の隠し名であり、貴方の誕生月ですよ」
「そうか」
「私、必ず見せに来るから。絶対に会ってくださいね!」
「承知」

義勇はそっと光希を抱き寄せた。
懐かしい匂いがする。

「子どもの扱いも慣れた。そいつの面倒も俺がみてやる」
「……お願いします」

「産まれたのが女子だったら、また桃色兎の人形を買ってやる。俺にはやはり妖怪にしかみえんがな」
「……妖怪じゃないもん。桃色の兎さん可愛いんだもん。男の子だったら?」
「木刀だな。俺が直々に稽古つけてやる」
「赤子に?強くなりそうですね」
「素質はあるはずだからな」

義勇は笑いながらそっと光希の身体を離す。


「頑張れ、光希。お前なら大丈夫だ」
「義勇さんも頑張って。貴方なら大丈夫です」


義勇がいなかったら、光希はとっくにこの世にいない。そしてそれは、逆もしかり。
強い絆で結ばれたこの師弟が、同じ月に死ぬかもしれない。


「身体を大事にな」
「はい。義勇さんこそ」


それでも負けない、と二人は決意した。


「光希、帰るぞ」
「はい」

千代の片付けを手伝っていた善逸が顔を出す。
寝ているあかりを起こさないように優しく抱き上げる。人形を離さないので、兎ごと腕の中に収めた。

きっと義勇と光希の会話も聞こえていたのだろうが、善逸は何も言わない。


「義勇さん、約束しましたからね」
「お前こそ。破るなよ」
「私が約束を破ったことありましたか?」
「……結構あるな」
「ここは『ない』でいいんですよ!」

光希は笑いながらゆっくりと立ち上がる。

「義勇さん、また来ます」
「ゆっくりなさってくださいね」
「ああ、またな」

三人は冨岡邸を後にする。


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