第77章 愛しき君へ
義勇と千代が帰ってきた。
光希と善逸は、産むことを決めたと報告する。
それをわかっていた義勇と千代は、全く驚く素振りを見せなかった。
「仕事、無理するなよ」
「はーい。別に走り回る仕事じゃないですし」
「いやいや、豪快に走り回ってる姿を俺はよく見てんだけど?」
「今後は走らないよ!」
「重いものも持つなよ!村田さんに全部持たせろ!」
「……うわー、善逸さん、絶対過保護になるわ。うるさそー……やだやだ」
「うるさく言うくらいで丁度いいんだお前は!絶対に無茶すんなよ!」
「善逸の心配事が増えたみたいだな」
「本当。苦労が絶えないわね」
千代は光希が食べやすいご飯を作ってくれ、皆で食べる。
帰る時に光希が義勇に話しかけた。
「義勇さん」
「なんだ」
「私は、五歳で両親と離れました」
「うん」
「でもぎりぎり、二人のことを覚えています」
「……そうか」
「人は五歳くらいの記憶は残る。だから、この子が産まれて五歳になるまで生きていてください」
義勇は現在二十四歳。
痣で死ぬと言われている歳まであと一年を切った。彼もたまに体調を崩すことが出てきた。
「…………」
「それに、貴方が二十五歳を超えることは、私や炭治郎の希望に繋がるんです。ここはひとつ根性見せてください」
「根性論ではない」
「いやもう、根性論です。こんなの」
義勇は座椅子に座りながら、眠ってしまったあかりを見つめた。あかりは桃色のうさぎの人形を抱いて、すやすやと眠っている。
「あかりが五つになるまでは、頑張ってやる」
それでも計算上、義勇の命の方が早く尽きる。