第77章 愛しき君へ
「ごめんな。諦めるとか言って。本当にごめん。俺、お前の母さんのこと大好きすぎて……、ごめんな。本当にごめんなさい」
善逸は光希の腹に向かって声をかける。
「顔見て謝りたいからさ、ちゃんと産まれてこい。元気に産まれてきて、俺をぶん殴れ。……頑張れ、頑張れ」
「善逸さん……」
善逸は身体を起こし、光希の腹に手を当てて祈るように話す。
「頑張れよ、頑張ってくれ」
「………ふふ、聞こえた?頑張れってさ、よかったね」
光希は善逸の手の上から自分の手を重ねる。
あかりに目線を送ると、彼女も小さい手をそこに重ねた。
「あかちゃん、がんばれ」
「………あかり、ありがと」
「お姉ちゃんといっしょにあそぼうね」
「そうだな。沢山遊びたいな」
光希のお腹が、じんわりと温かくなった。
「赤毛の癖っ毛が産まれたらどうしよう……俺、いろいろ悩むわ」
「あはは!お目々も赤いかも」
「……笑い事?信じてるよ?君たちちょっと仲良すぎるからね?距離が近いのよ、いつもいつも」
「私の中には竈門さん家の血も流れてるから。可能性はなくはないね」
「え?確認していい?これ、俺の子だよね?」
「……さてね」
「おいっ!!!」
善逸が突っ込みをいれ、光希は悪戯っ子のような顔をして笑った。