第77章 愛しき君へ
「いいか、光希」
善逸は光希の涙を指で拭う。
「俺はお前の夫だ。そして、ややの父親だ」
「……はい」
「これから先、何があっても一人で抱えるな」
「はい」
「二人で頑張るんだ。俺がいる。絶対に支えてやるから。大丈夫だよ」
「はい」
「あかりも、おてつだいする」
「そうだな。あかりもいるから三人だ」
「お姉しゃんになるの」
「そうだぞ。これから母さんは大変になるんだから、あかりも頑張ろうな」
「はい!」
善逸があかりを膝に乗せて笑う。
光希の目からまた涙が溢れる。
「ありがとう。善逸さん、あかり」
「こちらこそ」
「うん、いいよ!」
三人で笑い合う。
「さあ、光希、作戦会議だ」
「ん?」
「今後の対策を練ろう。どうせお前は仕事を辞めねえから、それを踏まえた上でどうやりくりしていくか」
「…………ぷっ、くくく」
「ん?どうした光希」
「そんなの、とっくに考えてあるっての」
光希がにやりと笑った。彼女のいつもの、あの見慣れた笑い方だ。
『俺を誰だと思ってんの?』
そんな声が聞こえる。
……この顔が出れば、大丈夫だ。昔から、こいつの策は見事だからな。どうせ驚く程にきっちり計算されてんだろ……これ以上の頼もしさはねえよ……
善逸はくくっと笑った。
「……左様でございましたか、軍師どの。おみそれいたしました。流石です」
「あはは。……うむ!」
「だから、『うむ』は殿だろ?」
二人はぶぶっと噴き出して笑う。
「あ、そうだ。謝らないと。……あかり、ちょっとごめんな」
善逸はあかりを膝から下ろして体勢をぐっと低くする。這いつくばるような形になった。
「善逸さん?」
善逸は、不思議そうにしている光希のお腹を覗き込みながら呼びかけた。