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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第77章 愛しき君へ


千代に布団を敷いてもらい、光希を寝かせる。
善逸は光希の手を握って、布団の側で心配そうに寄り添う。

「怒ったり叫んだりして疲れたんだろう」
「……無理させましたね。俺のせいだ」
「結論は出たのか」
「いえ……」
「お前もまだ考えがまとまってないだろう。仕方ない」
「はい」

「……時に善逸。お前、自分が今どんな格好をしているかわかってるのか」
「へ?………あ」

自分が肌着であることにようやく気付く善逸。
着物を光希に貸したままだった。

「すみません!みっともない格好で!」

善逸は焦って立ち上がる。

「お前、まさかとは思うが稽古場で……服を脱ぐようなことを」
「ち、違う違う!床に敷いたんですって!やだ、怖いですその顔やめて!」

善逸は、慌てて道場へ走っていった。
義勇はくすっと笑う。

「お前は本当に大事にされてるな」

眠る愛弟子の髪を撫でながら、声をかけた。


善逸は稽古場で、置き去りにされていた着物を着る。少しひんやりとした稽古場は、独特の気配を纏っている。

『……頑張れ、頑張れ』

先程、光希が吐きながら言っていた言葉が頭に響く。

………あれは、自分にじゃない。腹の子に言ってた言葉、なのか……

善逸は、帯を結びながら考える。


頑張れ、頑張れ……
私はどんなに苦しくてもいいから、育って……


彼女はかつて、この場所で、強くなるためにがむしゃらに鍛錬をしていた。

頑張れ、頑張れ……

きっと何度もその言葉を己に呟き、奮い立たせてきたのだろう。


同じ言葉を、今は腹の子にかけている彼女。
彼女はとっくに母親になっている。そして、自分ははるか後方に置いていかれている。


「………俺を置いて、先に行くんじゃねえよ。やや子は、俺の子でもあんだぞ」


善逸は、帯をぎゅっと締める。
深くお辞儀をして、稽古場を後にした。

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