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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第77章 愛しき君へ


「もうひとつ謝れよ、善逸」
「…………」
「諦めるっつったの、謝って訂正しろ」
「………承知できない」

「…………」
「俺は、お前を失いたくない。どうしても」
「…………」
「だったらこうならないようにしとけって話だよな。うん。そこはごめん。深く考えてなかった。俺が悪い」

善逸はペコリと頭を下げる。
結婚後は避妊をしていなかった。子どもが出来たら……と、どこか奇跡を願ってもいた。

しかし、そこに彼女の命がのしかかるのなら話は別だ。


「そりゃ、俺だって……!」

善逸の声が震える。

「俺だって、会いたいよ、この子に。会いたいよ……」
「善逸……」
「嬉しいよ。ものすごく嬉しいよ。信じられないし、もう、どうかなっちゃいそうなくらいに嬉しい」
「だったら」
「でも、駄目だ。お前を失うのだけは、駄目だ。絶対に」

「善逸。人は死ぬ。私も死ぬよ」
「わかってるよ!」
「そこを恐れちゃ駄目だ」
「……恐れるよ!とんでもなく怖えよ!!わかってるだけに……怖えんだよ」

善逸は光希の肩に手を置いて、真剣な顔で彼女を見つめる。
光希は善逸に言い返そうとして、ぐっと言葉を詰まらせた。手で口を押さえる。


「光希?」

光希は立ち上がって、口を押さえたまま一番近い手洗い場へ走る。

「こら!走っちゃ駄目!」

善逸は慌てて追いかけ、手洗い場で嘔吐する光希の背をさすってやる。

「……げほっ、……ぐぅっ…」
「光希……、光希、大丈夫か?いや、大丈夫じゃないよな。辛いな……よしよし」

「……っ、はぁ、はぁ……うぷっ、気持ち悪っ」
「光希……」

光希は息を荒くして、何度も吐く。
善逸は心配顔で、彼女を支えて背中をさする。

「はぁ……、はぁ……、頑張れ、頑張れ……」

光希は、吐きながらうわ言のように呟く。手は下腹部に添えられている。

口をゆすぐと、彼女の身体が力なくよろめく。
倒れないように慌てて善逸が支えた。

「おい、光希!しっかりしろ!」
「善逸…さん、ごめん……眠い」
「え?」
「ちょっと寝るわ。話はまた後でね……」

そう言って、善逸の腕の中で寝てしまった。


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