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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第77章 愛しき君へ


しばらくすると光希と千代が、お茶を持って部屋に来た。

千代はやたらとニコニコしている。

「母さん、どうしたの?」
「……いいえ?」
「???」

善逸は疑問符を浮かべる。

「光希、診察どうだった。蝶屋敷に行ってたんだろう。善逸から聞いた」
「ええ、まあ……」
「答えになってない。……どこか悪いのか」
「いえ」

善逸も心配そうに二人のやり取りを見守る。
あかりは千代の膝の上でお茶を飲ませてもらっている。

「俺にも詳しく教えてくれないんですよ。全くもう。仕事も休まないしさ」
「私にしか出来ないこともあるの」
「でも、体調悪いときくらいさ」
「…………」

「ね、本当に、どこが悪いの?教えてよ。教えてくれないと不安だよ」

「………なら、当ててみな」
「へ?」
「全部教えてもらえると思うな。考えろ」

突然光希が口調を変え、善逸は驚く。
久々に昔の表情が顔を出す。

「考えろったって……」
「手がかりは与えてる」
「えっと……ん?うーん……」

「……義勇さんはどう推理しますか」
「そうだな。……体調は悪いんだよな」
「ええ、まあ」
「だが、大丈夫というのも嘘ではない」
「ええ」
「……なるほど。もしかして、と思うことは一つある」

なにかに気付いた様子の義勇。
善逸はまだ首を傾げている。

「あかり。あかりはどう考える」
「あかりにも聞くのかよ!」

「……うーん」

あかりは小さな手を口元にあてて考え始める。その姿が光希にそっくりで、皆が笑いそうになる。
よく見てるなぁ、と感心した。

「間違っててもいいから言ってごらん。考えることが何より大事なんだよ」

光希が笑いながらあかりに話しかける。

「お母しゃん……」
「うん」
「あかりは……お姉しゃんになるの?」

光希を始め、その場の全員が息をのんだ。

「……理由は?」
「り、ゆう?」
「どうしてそう考えたの?」
「えっと……お母しゃん、いつもおえってなってたでしょ。カナちゃんもおえってなってて、そしたらすみちゃんうまれたの」

あかりは、たどたどしくも自分の考えを言葉にして紡ぐ。

考えているときの視線の動かし方や集中の仕方は、正に光希そのものだった。

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