第76章 家族
その後、千代からいろいろ教えてもらう光希と善逸。ここにも、ちゃんと一人育て上げたという実績を持つプロがいた。
光希と善逸はまたも強力な助っ人を得た。
冨岡邸には子ども用の布団や食具が既に用意されていて、いつでも泊まりに来いと言われた。
「子育ては大変だから。孤立しちゃ駄目よ。遠慮せずに、周りをどんどん頼りなさい」
「ありがと、母ちゃん」
「助かります」
「いいのよ、可愛いわね。ふふふ」
千代に抱っこされるあかり。がらがらをしゃぶりながらご機嫌だ。
千代が夕飯を用意してくれて、我妻一家は冨岡邸に早速泊まることになった。
「お前の学問所、凄いことになってるな」
「あはは、それほどでもあります」
「ここまで噂が聞こてきてるわよ」
「へえ、そうなんだ。学習塾じゃないからね。珍しいんだろうね」
「凄いというか……、流石というか……。この短期間でここまで事業を波に乗せるのは難しいだろう。いくつ策を仕込んだ」
「たっくさんです。ちなみにまだ発動してない策もありますからね。まだまだ収益はあげられますよ」
「怖いくらいだな」
「それもこれも、仕事を続けさせてくれてる善逸さんのおかげです。感謝してるよ」
「いや、こちらこそ」
「そうか。いつもは我妻があかりの面倒をみているのか」
「そうです。私、仕事辞めたくなくて。善逸さんが家事と育児をやってくれています」
「まあ俺が働いたところで、稼ぎはたかがしれてますしね……」
善逸はあかりにご飯を食べさせながら笑う。
「確かにあかりは我妻の方に懐いてる気がする」
「そうなんですよ!そこが辛い!やっぱり世話してくれる人が一番なんですよねー。私も出来るだけあかりと過ごすようにしてるんだけど。完全に善逸に…、善逸さんに持ってかれてる」
「……別に言い直さなくていいのに」
「駄目。習慣づけておかないと、ボロが出る」
「半年前まで自分のことを『俺』と言ってたのにな。変わるものだな」
「……中身は変わってませんよ。俺、昨日回し蹴りされてますからね」
「それは、避けられないお前が悪い。鈍ってるんじゃないのか我妻。道場貸すぞ」
「いいね!怪我も治ったんだ。後で手合わせしようぜ、善逸!……さん」
「ボロ出しまくりじゃねえか……」
義勇と千代が笑った。