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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第76章 家族


「名前、どうするの?」

申請書の子どもの名前部分は空欄になっている。

「光希と一緒に考えたかったから、まだ決めてない」
「そうなの?」
「だってさ、名前は親が子どもにあげる初めての贈り物でしょ?二人で考えたいじゃん」
「……確かにね」
「でも、提出期限があるから、急いで決めないと」
「………そっか。どうしよ……」

光希は腕組みをして考える。


「ちょっと待って」

自室へ去っていき、辞書と紙を持ってくる。

「こんな感じの名前がいいとかある?」
「よくわかんねえ」
「『子』をつけたいとか」
「別に」
「花の名前がいいとか」
「うーん……」

「ねえ、ちょっと、ちゃんと考えてる?」
「か、考えてるよ!」
「二人で考えるって言ったじゃん!」
「言ったけど、こういうのは絶対に俺よりお前の方が得意だろ!」
「そりゃそうだけどさ」
「いくつか候補出してよ」
「もう!人任せなんだから!」

文句を言いながらも、光希はパラパラと辞書を引いていく。真剣な顔つきだ。口元に手を当てて、紙にいろいろな名を書いていった。


悩みに悩んで、最終的二人が選んだ名前。
それは『あかり』だった。


かつて光希が背負ったものは、光だった。そして光希を闇から連れ戻したのも善逸の光。

光と明かり。
似て非なるもの。
でも、そのどちらも暗闇の中でも輝くことができる。

どんなときでも希望へと向かってほしい。
そう思って決めた。

『ひかり』ではなく『あかり』にしたのは、貴女は貴女の道を行きなさいという、二人からのメッセージだ。


「あかりー」
「あかりちゃーん」

二人が呼びかけると、あかりは善逸の膝の上で「うきゃう!」とケタケタ笑った。

「気に入ってくれたのかな?」
「うん、そうだと思う」
「あぁう、なぁう、あばば」
「ふふ、なんか喋ってる」
「可愛いなぁ、あかりちゃん」

「我妻あかり……なんか頭韻踏んじゃってるけど……ま、響きが可愛いからいっか。どうせ女の子は名字変わるしね」
「嫁にはやらん!」

「善逸さん、見事に親ばかになってる」
「なるさ!俺は親ばかで、嫁ばかなの」
「要は馬鹿なのね」
「こら」
「あはは」

「馬鹿は酷いよねー、あかり。どう思う?」
「きゃきゃきゃ!」
「爆笑かよ!」

隠れ家に、楽し気な笑い声が響いた。

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