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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第76章 家族


光希は息を切らして隠れ家に飛び込んだ。


「善逸っ!ただいま!ねえ、どうかしたの?」

玄関には善逸の草履が揃えられていたので、中に向かって呼びかける。


「やあ、光希。おかえり。仕事お疲れ様」

居間からほんわかした様子の善逸が顔を出した。その雰囲気には、全く緊急性がない。

しかし、光希は彼を見てぶったまげる。
戦いが終わってからのここ数ヶ月間で、一番驚き、混乱しているのがわかる。

「え……、な…に?」

あまりに驚いて、言葉をなくす。
善逸に、ではなく、善逸の抱いているものに驚いているのだ。


「あぶっ……、だ…だぁ……ぶ」
「よしよし、いい子だね。さあ、会いに行くぞ」


善逸は、その腕に赤子を抱いていた。


光希は何度もぱちぱちと瞬きをしながら、玄関でぽかんとする。頭脳明晰な彼女の思考が追いついていない。

善逸は赤子を抱いたまま光希に近付く。

「はじめまして、だな」
「……は?」
「どうした?とりあえず、あがんなよ」
「………あ、うん」

光希は草履を脱いで家に上がる。
善逸に付いて居間へ行く。

「………どこの子だ」
「やだ光希、顔怖いよ」
「子守の仕事でも始めたのか」
「違うよ」

善逸は、胡座の上に赤子を乗せてあやしながら、机上に置かれた紙を光希に見せる。

「やっと許可が取れたんだ。この子は、俺の子だよ。なー?父ちゃんだぞー」

嬉しそうに見せられた紙は、養子縁組の書類だった。


「何を考えてる」
「もうわかったんじゃねえの」
「………ちゃんと説明しろ」

光希は善逸を睨んでいる。
もし自分の想像通りなのだとしたら、それはあり得ないことだから。


「お前は子どもを産めないことを気にしてるだろ」
「…………」
「だから、この子に俺の……、俺達の子どもになってもらう。そのために引き取った」

やはりそうか、と光希は思う。
ギリ…と歯を食いしばる。

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