第5章 フーシャ村へ買い物
その約束をしてからエースは自分の意見を言うようになった。
自分から言うことはないが聞けば答えてくれ、エースの意見を尊重しながら二人でどんどん生活に必要なものを揃えていく。
恋歌の生活に最低限必要だと思われるものは神様が予め用意しておいてくれた。
だから別に恋歌の分は食器などは買わなくてもあるのだが、エースとコップを色違いにしたり、自分好みの物があれば購入した。
ソファーなどの大きなものは持っていくのがめんどうだったため、後で取りに来ると言い、店に置いておいてもらった。
途中でお昼になったので昼食も食べ、エースのご飯を食べるときの子ども用の椅子も買い、必要なものが大体揃った。
時間を見ても折角フーシャ村まで来たのに帰るには早い時間だった。
『まだ時間あるしぶらぶらして帰ろっか
欲しいものがあれば言ってね』
エ「うん」
『人が多くなってきたし、はぐれないでね』
そう言ってエースの手を握る力を少しだけ強める。
エースの歩幅に合わせて歩いているため歩く速度は恋歌にしたらかなりゆっくりな歩調だ。
抱き上げて歩けばいいのだが、小物などは手に持ちながら歩いているのでエースが恋歌に抱えられるのを断ったからエースは自分で歩いている。
しかしエースはまだまだ小さく他の人から見えにくいので、人の波に拐われそうになっている。
何とか恋歌はエースに気づかれないように時々フォローしていたがついに人の足にぶつかり尻餅をついてしまった。
『大丈夫?
どこか怪我は?』
すぐに恋歌はエースのそばにしゃがみこみ背中に手をあてて起こしてやる。
エ「だ、大丈夫」
その返事にほっとする。
「おい」
すると上から少し苛ついたような声が聞こえた。
恋歌とエースが同時にその声を発した人物に目を向ける。
おそらくエースがぶつかった相手なのだろう、そこには人相の悪いいかにも悪人ですよという顔があった。
その顔がエースを睨み付けながら見下ろしている。
後ろにいる数人も仲間だろうか。
「ボウズ、人にぶつかっておいて謝りもしないのか?」
『(うわ、またベタな展開きたわね…
王道中の王道
めんどうね…)』
恋歌はこれから起こるであろうことが大体予想できたため心の中で溜め息をついた。