第11章 風柱
不貞腐れたような顔を浮かべる実弥の服の裾を、陽華はちょんちょんと引っ張った。
「んァ?」
実弥が陽華の方を見ると、陽華は優しい顔で実弥を見ていた。
「血の繋がった兄弟なんでしょ?…じゃ、しょうがないんじゃない?」
そう言って、ニコッと笑った。
焚き火の優しい光に照らされた陽華の笑顔は本当に綺麗で、実弥は自分の胸がどくんと波打つのを感じた。
実弥は熱くなってきた顔を悟られないように、舌打ちすると寝返りをうって陽華に背を向けた。
「ほんっとうに、匡近といい、おまえといい!調子が狂いやがるっ!もう寝るっ!!」
「素直じゃないなぁ。」
「うるせェー!!」
陽華と一緒にいると、実弥の完全に冷たくなった心に暖かい風が吹いた。
こんな気持ちは初めてだった。でも多分、この気持ちを陽華に伝えることはないだろう。陽華の心には違うやつがいるのを知ってるから。
でも今だけは、この心地よい風の中にいさせてくれ。と、実弥は心の中で、そう願った。
ー風柱 完