第9章 ※誘惑
報告に立ち寄った鬼殺隊本部で、たまたま音柱・宇髄天元に会い、茶でも飲んでけと、宇髄家に招待された陽華。
普通に世間話をしていただけだったのに、突然天元が、陽華の身体を値踏みするように、上から下まで眺め回した。
「おまえ、やっただろ?」
天元の突然の問いかけに、陽華は一瞬意味がわからなかったが、その意味に気づいた瞬間、顔を真っ赤に上気させた。
「な、なんで!?」
「俺様くらいになるとわかるんだよ。おまえの仕草や色、艶で。」
天元はニヤッとした顔を陽華に向けた。陽華は動揺を落ち着けると、天元に向かって言った。
「あれは事故みたいなもので…、」
「事故?好いた男とやったんだろ。何か問題があんのか?」
思っていた反応とは違っていたので、天元は首を傾げた。
「あれは一回きりの……もうっ!色々とあるの!」
「ふ~ん。まぁその辺はよくわからんけど。一回きりか…。でも、一回でも知っちまって、冨岡の奴は、これから耐えられるのかねぇ。」
「…え?…そういうものなの?」
恐る恐る聞いてきた陽華に、天元はニヤけた顔のまま、コクコクと頷いた。
「思い出しちまうんだよ。日常のなんでもない時の表情、仕草や声が、情事の時のと被って見えてくる。そしたら、もう欲しくて欲しくて、堪らなくなる。」
そう言って、天元は艶を帯びた眼差しを陽華に向けた。その表情に、陽華はゴクリと唾を飲んだ。
「…でも冨岡の性格じゃ、けしておまえで解消することはしないだろうな。」
陽華は天元の話しに、うんうんと頷いた。
「え?じゃ、結果どうなるの?」
「…最悪、他の女で済ます。」
「えぇーーーーーー!!」
最悪の状態を想像し、陽華は叫び声を上げて、天元の腕にすがりついた。
「やだやだっ!どうすればいいの?」
「そりゃ、冨岡をド派手に誘惑するしかないだろ?…おまえのココと、」
天元は人差し指で、陽華の唇を指して、
「あと、ココでな。」
身体を指差した。
「え?」
「おい、雛鶴、まきを、須摩!!」
「はーい!」
そして陽華は、奥にいた宇髄の嫁達に、朝方まで拉致されたのだった。