第8章 親友
任務からの帰り。
お舘様に報告を済ました後、腕の傷を見て貰いに蝶屋敷に寄った陽華は、診察室で蟲柱・胡蝶しのぶの診察を受けながら、一連の出来事を頬を赤らめながら報告した。
「と、そういう感じになってしまいました。」
腕の傷口を見ながら、黙って聴いていたしのぶは、最後のところで動きを止めた。静かに顔を上げ、陽華の目を見つめた。
「冨岡さんとは、そこまでの関係になる気はないと、おっしゃってましたよね。恋人ごっこを楽しんでいるだけだと。」
にっこりと笑いながらも目は笑っていない。その様子に陽華は、慌てて言い訳した。
「そうなんだけど、頭の中がぐちゃぐちゃで、もう何もかも忘れたくて…、そのまま欲望にままに動いた…というか……、うん、すいません。」
陽華が反省するように項垂れると、しのぶは、はぁ~っと深くため息を着いた。
「わかりますよ、この仕事は辛さは。全てを忘れたくなる気持ちも。私だってもうどうでもよくなることだってあります。」
しのぶは陽華の手を両手でぎゅっと強く握った。
「でも関係を持ってしまったら、傷つくのはお互いだと、そうおっしゃったのは陽華、あなたですよ。」
「うぅ~、だから反省してますっ!」
泣きそうな顔で陽華が言った。しのぶは小さく息を吐くと、「もう。仕方ありませんね。」と呟いた。