第44章 水魚之交
生い茂る木々が、春の優しい日差しを遮り、葉の合間から落ちる木漏れ日が、陽華達の歩く砂利道をキラキラと照らしていた。
待ち合わせた場所に着いた陽華と義勇、天元は、ちょうど向かいの道から来た人物たちに気づいた。
「炭治郎、こっちよー!」
陽華が元気良く手を振ると、存在に気付いた炭治郎、禰豆子が慌てて走り出す。その後を善逸、伊之助の二人が付いてくる。
「すいません、出かけに善逸がぐずって遅れました。」
炭治郎はそう言うと、善逸の頭を掴み、無理矢理に下げさせた。下げさせられた善逸も、目の前の陽華達の姿を見て、まずいと思ったのか、素直に「すいません。」と謝る。
そんな炭治郎達を見て、陽華は微笑むと、
「大丈夫よ、私達も今着いたばかりだから、ね?」
そう言って、穏やかな表情で義勇と目を合わせた。
鬼殺隊・共同墓地
鬼殺隊が解散し、各自がそれぞれの帰路に着く日、炭治郎の提案で、陽華達は、鬼殺隊員達の墓参りをすることになった。
陽華と義勇も、狭霧山に帰る前に世話になった仲間たちに挨拶をするつもりだったから、二つ返事でこの提案に乗った。
ちょうど炭治郎の見舞いに来ていた天元も誘い、実弥も誘ったが、自分は皆で仲良く墓参りする柄じゃないと、断られた。
もちろん実弥も、一人で墓参りはするつもりだろう。ここには玄弥の墓もある。玄弥の身体は鬼のように消滅し、形だけの墓だが、鬼殺隊という職業柄、そんな墓は多数存在した。それでも、それなりの拠り所にはなる。
陽華と義勇とって、錆兎の墓がそうだったように。