第43章 最後の会議
最後の柱合会議を迎える日の朝。
蝶屋敷の一室で陽華は、義勇の髪の毛を切ってあげていた。
「出来たよ!」
そう言って陽華は、鏡越しに義勇を見る。義勇は鏡の中の自分の姿を見て、左右を確認するように顔を動かしながら、陽華に問いかけた。
「別に…おかしくないか?ん……どうした?」
鏡越しで、義勇をじーっと見詰めている陽華に、義勇が声をかけた。
「うーん。イケメンはどんな髪型にしても、イケメンなんだなぁ。って、」
「?……イケメン…て、なんだ?」
首を傾げる義勇に、陽華はニコニコと微笑んだ。
「しかし、こんなに短くしたのは初めてだから、落ち着かない。首がスースーする。」
義勇が落ち着かなさそうに首を撫でていると、陽華が突然、その首にそっと抱きついて、口づけをした。
「…どうしたんだ?」
「義勇が慣れるまで、毎日こうして温めてあげようかなって。」
「そうか?…でも俺は、されるならこっちの方がいい。」
義勇の手が陽華の後頭部に回され、引き寄せられる。その唇に、唇が触れる…その寸前…、
「おいっ!」
突然、後ろから声をかけられ、二人が同時に振り向くと、そこには顔を引き攣らせた不死川実弥が立っていた。
「お前ら、何やってんだァ!早く行かねェーと、時間になっちまうぞ。」
「はーい、すいません。」
陽華は楽しそうに返事すると、義勇と共にその場を片付け、用意していた羽織に手を通した。
仕立てたばかりのような、綺麗な羽織。
この羽織もそうだが、義勇の羽織も陽華と義勇が寝ている間に、禰豆子が繕い直してくれた物だった。
この羽織を見たとき、義勇はすごく喜び、禰豆子に感謝を述べたが、陽華は自分が作ったときよりも喜んでると、少しへそを曲げて、義勇を困らせた。
その経緯があるからか、すこし遠慮がちに羽織に手を通す義勇を見て、陽華は小さく笑った。
そして、すべての準備を整えた陽華達三人は、最後の柱合会議に向かうべく、産屋敷家に足を運んだ。