第40章 柱
義勇が近くまで来ると、陽華は問いかけた。
「あんなところで何してたの?」
「…いや、男らしく送り出したはいいが、不死川はいい男だから、やはり心配になった。」
「お前みたいなツラのヤツに言われても、嫌味にしか聞こえねェーんだよっ!!」
実弥が苛つきながら言うと、義勇は驚いたように目を見開いた。
「なぜだ?不死川は俺なんかよりも、男気があって、力もあって、柱としては申し分のない。顔に傷もある。それはいい男だろう?」
実弥の実力を認めた上での発言だったが、当の実弥は義勇に褒められたことが気持ち悪かったらしく、顔を引き攣らせた。
だが義勇の関心は、実弥の反応ではなく、ベットの上にあった。
「それに…手を繋いでる。」
義勇が、陽華の手の上に乗せられた実弥の手を見ると、切なそうな顔を見せた。
「ばっ、…これは、そんなんじゃねェーわァ!」
実弥が慌てて、手を引いた。顔を上気させる実弥に義勇は冷めた目線を送る。
「やはりいい男は違うな。そんなに簡単に、軽々しく女子の手が、握れるのだから。」
「あ?馬鹿にしてやがんのかァ?俺が節操なく、誰にでもしてるみたいな、言い方すんなァ!」
「ほら、またっ!いい加減にしなさいよ、あんた達がそんなんじゃ、天国に行った皆が心配するでしょ?」
陽華が二人を諌めるように言うと、実弥が否定するようにこう言った。
「アァ?俺と冨岡が、仲良くした方が心配すんだろ?」
「……あ、確かに。」
そういった実弥に妙に納得してしまい、陽華はうんうんと頷いた。
「それにほら、見てみろよ、あの空。あいつらもいつも通りだって、笑ってくれてらァ。」
実弥に促され、陽華と義勇は窓の外を見た。
そこには、何処までも澄み切った青空が続いていて、三人の目にはみんなが笑ってくれているように見えた。
・・・・
「言っとくが、冨岡ァ!てめーとは、まだ決着が着いてねーかんなっ!」
「今の所、寝たきりのお前の方が、分が悪いように思えるが?」
「あぁ!?上等だァっ!今すぐに、表に出ろオォォ!」
そう言って、起き上がろうとする実弥を陽華が慌てて止める。
「ちょっと、本当にいい加減にしなさいよっ!!」
陽華の怒号が、狭い病室に響き渡った。
ー 柱 完