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【鬼滅の刃】水魚之交

第39章 目覚め





あの戦いから、数週間が経過した。


鬼殺隊の長年の悲願だった鬼舞辻無惨を討ち取ったことは、大きな成果だったが、失った物、その代償はあまりに大きかった。

鬼殺隊は隊士のほとんどを失い、その中心であった柱も、冨岡義勇、不死川実弥、氷渡陽華の三名を残すだけとなっていた。

だが、その残った者達も、けして良好な状態とは言えなかった。

一度は一命を取り留めた陽華も、その傷は深く、何度も危ない夜を迎えた。それでも徐々に回復し、なんとか立ち上がり、ゆっくりとなら歩けるほどにまでには回復した。

しかし、陽華よりも長い時間、無惨と間見えた者たちが目覚める兆候は、まだ見られない。


義勇も実弥も、そして炭治郎も、未だに生と死の間を彷徨っていた。







蝶屋敷、面会謝絶と書かれた部屋の中で、冨岡義勇は生命線とも呼べる、たくさんの長い管に繋がれた状態で、ベッドの上に静かに横たわっていた。

こっそりと部屋に忍び込んだ陽華は、ベッドの横に置かれた椅子に座り、義勇の残された左手をそっと握りしめた。

「義勇…。」

小さく声を掛けるが、義勇はピクリとも動かない。陽華は不安に顔を曇らせながら、義勇の顔を見つめた。



ここしばらく、アオイに怒られながらも、義勇の部屋に通い続けているが、どんなに呼び続けても反応がない。

それほどまでに無惨の残した傷跡は、義勇達の身体を蝕み続けていた。

陽華自身もまだ完全に回復出来ず、時折高熱や激しい動悸のような発作を起こし、絶対安静を強いられている。

愈史郎が定期的に運んでくれる血鬼止めも血清も、付け焼き刃に過ぎず、後は本人たちの気力と体力が持つかの、勝負だった。




どんなに呼び続けても反応のない義勇に不安になり、陽華は義勇の顔を覗き込んだ。

薄っすらと汗をかいているのか、伸びた前髪が頬に張り付いていて、陽華はそれを指で払い除けた。
そして、ベッド脇に置かれた洗面器に掛けられた手ぬぐいを取ると、優しく汗を拭き取って上げた。

手もそうだが、顔が熱い。恐らく熱が上がってるのだろうと予想出来た。アオイを呼ぼうか迷っていると、突然、義勇が苦しそうに呻いた。




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