第38章 最終決戦 夜明け
陽華は暗い道を、ただ静かに歩いていた。
右も左も分からない。けど、行き先だけはなんとなくわかる。目的地に向かい、陽華はゆっくりとその道を進んでいく。
だが、ふと立ち止まると、ゆっくりと辺りを見渡した。
「……ここがあの世?なんだか、味気ないところね。」
もっとお花畑があって、川が流れてて、蝶や動物がいて…、そんなお気楽なのを想像をしていたのに、思っていたのと違った。
でも反対にこの暗闇が、現実を見せつけられているようで、陽華の心を落ち込ませる。
このまま、本当に自分は死んでしまうんだな。そう思うと、残してきた義勇の顔が浮かんで、胸が傷んだ。
「義勇、置いてきちゃったな。…今頃、泣いてるかな。」
本当は弱くて脆い、そんな義勇の心を解ってくれて、救ってくれる人が現れればいいけど。
そう思う反面、もし本当にそんな人が現れたら……。
「……やだな。義勇を、他の人に取られるの。」
顔を俯かせ、小さく呟く。
静かに涙が溢れてきて、陽華はその場に膝を抱えて座り込んだ。
「うっ…っ…、義勇に会いたい…。」
自分が死んでも、こんなに辛いとは思わなかった。後から後から、涙が溢れ来て止まらない。陽華は自分の膝に顔を埋めて、しばらくの間泣いた。
「……陽華?」
そんな陽華の耳に、誰かが自分を呼ぶ声がした。陽華は顔を上げ、周りを見渡した。
「……誰?」
ふと、肩に暖かさを感じ、陽華は振り向いた。そこにいたのは、
「カナエ!?」
「久しぶりね。……元気にしてた?って、言うのはアレね。」
死んでしまったのに、聞くのも野暮だと思ったのか、カナエはクスリと笑った。