第36章 最終決戦 鬼の始祖 前編
強大な敵を目の前に、身体が震える。
ともすれば、意識すら持っていかれそうな重圧に、陽華は立ってるのがやっとだった。それほどまでに、この鬼舞辻無惨と言う男から漂う空気は、次元を越えていた。
(…隙がないどころじゃない。斬りかかろうと思う事さえ、躊躇する。)
でも、やらなけばならない。無惨を逃がさぬよう、他の柱達が辿り着くまでの間の時間稼ぎを、ここにいる三人だけで成さねばならないのだから。
両者が睨み合う中、先に仕掛けたのは無惨の方だった。
突如、無惨の両腕が触手のように変化した。それは鞭のように撓り、研ぎ澄まされた刃のような鋭さで、陽華達に襲いかかってきた。
縦横無尽に暴れまわる触手を、陽華はギリギリで避け、真正面から襲いかかってきた触手を刀で受け止めた。
「くっ!!」
その重い一撃に腕が持っていかれそうになる。さらに速さも尋常じゃない。上弦の強さが、赤子のように可愛く見えてくる。
(本当にギリギリ避けれてる。けど、避けれてるだけで、斬り込めない。)
陽華に焦りの色が見えてきた。チラッと無惨に目を向けると、無惨は三人を相手にしているとは思えないほど、涼しい顔をしていた。恐らく少しも本気を出していない。
(これ、夜明けどころか、行冥さん達が来るまでも持つの!?)