第35章 最終決戦 邂逅
上弦の弐は、しのぶの毒のおかげで、なんとか倒すことが出来た。しかし陽華達の疲労は凄まじかった。上弦の弐でさえ、あの強さ。しのぶの作戦がなければ、ここで終わっていた。こうなると、鬼舞辻無惨の強さはもはや想像すらつかない。
(…急がなくちゃ、)
出来るだけ多くの戦力が、鬼舞辻の元に向かわなくてならない。他の柱達が今どういう状況になっているのかわからないが、こんなところで足止めを食っている場合じゃなかった。
陽華は呼吸を繰り返した。
「スゥー、スゥー…」
火を焚き、凍傷して感覚のなかった右腕を暖め、呼吸でゆっくりと血を巡らせる。徐々に感覚が戻り、指先が動くようになった。もう少し放って置いといたら、壊死してたかもしれない。
一番危なかった場所がどうにかなると、今度は腹と背中の傷だ。血が静かに滲んでくるのを感じていた。陽華は羽織の内側から、携帯用の救急道具を出すとカナヲを見た。
「カナヲ、傷は縫える?」
カナヲが頷くと、陽華は伊之助がいることも気にせずに、上半身の衣服を全て脱ぎ去った。
カナヲが丁寧に傷口を縫い始める。医療には関わってなかったとは言え、さすがは蝶屋敷の一員なのか、見よう見まねだろうが綺麗に塗ってくれた。
「ありがとう。カナヲ、いいお医者さんになれるよ。」
陽華がそう言うと、カナヲは恥ずかしそうに微笑み、頬を赤らめた。