第4章 嫉妬
「気にするな。俺たち三人で必ず鬼殺隊に入るって約束したろ?
義勇、罠の場所はわかるな?誘導を頼む。」
義勇は小さく頷くと走りだした。走りながら、的確に罠を感知し避けていく。そのあとを陽華を背負った錆兎が着いてくる。
時折、罠をくらったが三人は無事に麓まで降りてこられた。
麓では鱗滝が待っており、陽華はすぐに手当てを受けて、大事には至らなかった。
「錆兎の応急処置が完璧だった。よくやったな、錆兎。」
鱗滝が錆兎の頭を撫でた。錆兎は嬉しそうに顔を綻ばせた。
「錆兎、ありがとう。」
布団から起き上がった陽華が、傍らに座る錆兎に静かに抱きついた。錆兎は照れながらも、陽華の頭をぽんぽんと優しく撫でる。
その光景を見ていた義勇は、心が暖まるのを感じるのと同時に、ちくちくと痛むのを感じた。
錆兎がすごいのは、出会った時からわかっている。自分なんかとは比べられないくらい優秀で、山での的確な対応も、義勇は言われるまま動くしか出来なかった。その点では、心から尊敬している。
でも、陽華と仲良くしてるのを見ると、義勇は胸がちくちくした。
きっと、陽華も錆兎のことが好きだ。態度を見ていればわかる。
義勇は二人が大好きだった。二人が幸せになれば、こんな嬉しいことはない。けどこのちくちくだけは、恐らく一生感じながら生きて行くんだ。
その時だった。
手に暖かい温もりを感じた。
錆兎から離れた陽華が、そっと義勇の手を握っていた。
「義勇もありがとうね。」
にっこりと笑う陽華の顔を見て、心のちくちくがなくなって、心が暖かくなるのを義勇は感じた。
別に陽華が錆兎を、好きでも構わない。
側にいて、この笑顔を見ることが出来るなら。
その為に、もっと強くなる。
この笑顔を守るために……
ー嫉妬 完