第32章 宴
「陽華ちゃん、ここ座っていい?」
小芭内を実弥に取られた蜜漓が、寂しそうに陽華の元にやってきた。陽華がうなづくと、蜜漓は嬉しそうに隣に座った。
その時、蜜漓の足に何かが当たった。蜜漓が不思議に思い、長机の下を覗くとそれは誰かの足だった。蜜漓は驚いて、机の向こう側を上から見下ろした。
そこには、岩柱・悲鳴嶼行冥が大の字に倒れていて、蜜漓は思わず声を上げた。
「きゃっ!悲鳴嶼さん、どうしたの?」
「お酒、弱かったみたいです。寝かせときましょう。」
しのぶがそう言って、苦笑いした。その時、勝負に盛り上がる男子軍から、盛り上がる歓声が聞こえ、陽華達はそちらに目をやった。
「なんか、あっち盛り上がってるね。」
陽華はそう言うと、一緒に見ていた蜜漓が驚いたように呟いた。
「冨岡さん、本当に変わったよね。表情が柔らかくなったし、喋るようになった。」
「そうだね。…あ、だめよ。どんなに格好良くても、狙っちゃ!」
陽華が冗談交じりにそう言うと、蜜漓は顔を赤らめて慌てて否定した。