第32章 宴
「時透ォ、お前も飲むかァ?」
天元に抱えられ、連行されてきた無一郎の存在に気づいた実弥がそう言って不適に微笑むと、それを聞いていた義勇が怒ったように実弥を嗜めた。
「不死川、時透はまだ子供だ。駄目に決まっているだろう。」
「はいはい、お堅い水柱様はよォ、冗談も通じねェなァ?」
実弥は「フンッ」と、鼻を鳴らし、自分の杯に酒を注ぐと、それを一気に飲み干した。それを見ていた小芭内が、すかさず実弥に突っ込んだ。
「おい、不死川!今、継ぎ足した酒、少なくなかったか?」
「んなわけねェーだろォ!」
「伊黒こそ、そんなことで惑わせて、一杯分誤魔化そうとしたのではないのか?」
「なんだと、冨岡っ!貴様こそっ…、」
「ほらほら、あんまりはしゃぐと、何杯飲んだか、分かんなくなるぞ?」
宇髄が楽しそうに、三人を嗜めた。
「これが、…大人の男の戦い?」
無一郎は、大人げなく罵り会う四人に、冷たい視線を送るとため息を付いた。
(何、この人達。…ただの馬鹿じゃないの?)
無一郎は密かに思ったが、口に出さずに心で呟いた。