第32章 宴
柱稽古の最中に、鎹鴉によってもたらされた伝令。
ー 稽古終了後、柱ハ宇髄家ニ集合。特別任務ノ為、帯刀ハセズ、全員私服デ参加セヨ ー
とのことだった。
伝令通り、陽華と義勇が宇髄家に行くと、そこには豪勢な料理と酒の並んだ、宴席が儲けられていた。もうすでに揃っていた柱の面々は、それぞれ好き勝手に盛り上がっていた。
「おっせーぞ、おまえらっ!」
呆然と立ち尽くす陽華達に、気づいた天元が声を掛けた。任務とは言いがたい光景に少し戸惑いながら、陽華は天元に問いかけた。
「ねぇ、天元さん。これ、任務?」
「わかんね。俺は悲鳴嶼の旦那に言われて、この会の準備しただけだ。とりあえず、派手に飲んで食って、楽しめってさ。」
いつ敵が攻めてくるかわからないこの状況で、主力戦力である柱が、飲み会でどんちゃん騒ぎ?
陽華は疑問を抱きつつも、とりあえず先に来ていた胡蝶しのぶの隣に、義勇と共に座った。
しのぶは、やっと来た陽華を嗜めるように言った。
「随分と遅かったですけど、何をしてたんですか?」
「それは…まぁ、色々と…。」
陽華は目を泳がせると、しのぶは疑わしそうな視線を陽華に向けた。
「そ、それよりっ!…なんなの、この会。しのぶは聞いてる?」
「いいえ、私も何も。ただ楽しめ…とだけ。…あそこに悲鳴嶼さんがいるから、聞いてみたらどうです?」
そう言われて、陽華は行冥の方を見た。行冥は宴会席の端の方で、みんなが騒いでいる様子を優しい笑顔で見守っていた。