第29章 ※逆上せあがる
義勇はそう言と起き上がり、陽華に覆い被さるように、湯桁に両手を掛け、陽華を見下ろした。
「おまえにかき乱されて、俺がどれだけ必死に自分を抑えているか、教えてやる。」
熱の帯びた眼差しで見詰められ、陽華は自分の胸がドキドキと激しく高鳴っていくのを感じた。
(……教えるって、何する気?ていうか、めちゃくちゃ厭らしい顔してんだけど…っ!!)
陽華が直視出来ずに顔を背けると、義勇はその耳許に顔を寄せ、囁いた。
「……言っとくが、今までは理性…、保っていた方だからな。」
そう言うと義勇は、陽華の耳の中に舌を入れて、舐め回した。
「やっ……耳、だめっ…、(…やばい…何も考えられない…、頭がぼーっとしてきた…。)」
陽華は義勇の両肩を掴んで、引き剥がそうともがいた。しかし義勇はビクともしなかった。
「義勇…、んぅっ、今日はもうだめっ…、これ以上は身体がもたない…っ…、」
「…やめない。」
義勇は陽華の首筋をねっとりと、舌を這わせた。
「ひゃあっ!」
突然、浴場の景色がボヤけて見え、ふわっと視界が揺れた。
「…あ、本当にやばい……。義勇…、私……逆上せたかも……、」
ガクッと、陽華が力無く義勇にもたれ掛かった。
「……陽華?」
異変に気づいた義勇は、驚いて陽華の身体を揺さぶった。しかし、反応がない。
「まずい、やり過ぎた。」
義勇はそう呟くと、陽華を抱き抱え、浴場を飛び出した。
義勇に抱き抱えられ、薄れ行く意識の中で陽華は思った。
やっぱり私の方が、確実に翻弄されてるじゃない!
ー 逆上せあがる 完