第28章 実弥
「まてェ、冨岡ァ!俺と勝負しろォー!」
鬼殺隊の敷地内の道で声を掛けられ、義勇が声のする方に振り向くと、風柱の不死川実弥が立っていた。
(…チンピラが来た。)
一瞬、義勇は本当にそう思った。
なぜ急にいちゃもんをつけられたのか、真意がわかりかね、何も言わない義勇に、実弥は近寄ってきた。
「まただんまりか?本当に気にいらねェ!」
(チンピラに絡まれてる…。)
義勇は、ずっと至近距離でガンくれてる実弥から顔を背けて言った。
「俺には戦う理由がない。稽古なら受けるが。」
いつも通り受け流し、澄まし顔の義勇にムカついたのか、実弥は義勇の襟元を掴んだ。
「陽華の柱稽古の話を聞いたぜェ。柱として柱稽古にも参加しないくせに、そんなとこは積極的に動くんだなァ。舐めてやがんのかァ!」
義勇は実弥がなんで怒っているのかわからず、襟を掴んでいる実弥の手首を掴み自分から引き剥がした。
「柱稽古なら、今日からはじめている。文句はないだろ。」
「てめェ、それでチャラになるわけねェだろうがァ!!」
実弥は義勇から距離を取り、自分の刀に手を掛けた。それに反射して、義勇も自分の刀に手を掛ける。