第27章 ※初めての夜
義勇は半身を起こすと、陽華を自分の方に向けた。顔を近づけ、その唇に自分の唇が触れるか、触れないかぐらいまで近づき、囁いた。
「もう一回したい。」
「だ、だめだよっ!もう夜も遅いし、明日からの柱稽古の計画立てたの?」
陽華の手が慌てて義勇を押し戻した。
「あぁ、稽古内容はお前が一回帰ったときに考えた。…それと夜遅いって、夜は俺達の専売特許だろ?」
そう言いながら、陽華の手を取ると、その甲に静かに口づけながら、陽華の目を見た。
「嫌なら、逃げればいい。柱なら出来るだろ?」
「よく言うよ。上に覆い被さって、全力で抑える気満々のくせに…、」
「本当に嫌なら、しない。」
義勇は挑発するような視線を陽華に向け、微笑んだ。
「…嫌じゃないだろ?」
ー ずるい。いつもそうやって、勝手に決めて、勝手に進めて、勝手に完結させる。自分の歩みで、自分の都合で、自分勝手な奴だって思ってた。でも本当は、私が同じ事を思ってるって、わかっててやってるんだよね ー
陽華が何も言わないのを、肯定だと捉え、義勇はゆっくりと陽華の首筋に口づけた。
「ねぇ、義勇。じゃあ、もう一回言って…、さっき、最後に言ってくれた言葉。」
義勇は一瞬、怪訝そうな顔を浮かべたが、ふと思い出して微笑んだ。陽華の額に額を付けると、囁くように言った。
「好きだ…、愛してる。」
「ん…、私も愛してる…。」
陽華は義勇の首に手を回すと、深く口づけした。
ー もう恐らく決戦の時は近づいてるだろう。一緒にいられる時間はほとんどない。それでも、最後の時までお前と一緒に生きていきたい。
義勇は、温もりを確かめるように、力強く陽華を抱き締めた。
ー初めての夜 完