第26章 柱稽古の後
柱稽古の後、義勇の家の稽古場で二人は正座で向かいあっていた。
「すまない。」
義勇が頭をゆっくりと下げた。そして経緯を説明してくれた。
「…そう、炭治郎が。」
陽華の呟きに、義勇は静かに頷いた。
炭治郎の一言で目を覚めたと聴いて、私の八年間はなんだったのだろう。と、一瞬釈然としなかったが、自分も錆兎のことは辛すぎて、話題を避けていたのは確かだった。
それどころか、あの日から一度でも、自分から錆兎の名前を出したことはなかった。
それに何を言っても義勇には届かないと、勝手に諦めていたところもあった。
(きっと、私と義勇がちゃんと向き合ってさえいれば、簡単なことだったんだ。)
「ははっ、私たちの馬鹿だね。すごく、遠回りしちゃった。」
突然笑いだした陽華に、義勇はびっくりしたが、すぐに笑顔になった。
「本当にそうだな。」
義勇は正座を正すと、ゆっくりと息を吐いた。まっすぐと陽華を見つめると、こう言った。
「陽華、改めて言う。こんな情けなくて未熟な俺だが、どうか命の尽きるその時まで、共にいてほしい。」
「はい、宜しくお願いします。」
次の瞬間、義勇は陽華の手を掴み、自分の方へ引き寄せ、強く抱きしめた。
愛しい者をもう二度と離さない。そう誓って。