第24章 疑惑
ー冨岡義勇邸
「ハークションっ!」
陽華達によって、有らぬ疑いをかけられていた義勇は、自身の屋敷の中で盛大にくしゃみをしていた。
「義勇さん、風邪ですか?」
義勇の屋敷で夕飯の準備をしていた炭治郎が心配して声を掛けた。
「いや、いきなり出た。」
「ほら、鼻水出てますよ。…はい、かんでっ!」
炭治郎に鼻に手拭いを当てられ、義勇は鼻をかんだ。
(……お母さん。)
鮮やかな手つきで鼻をかまされ、義勇は心の中でそう呟いた。
「炭治郎、いつまで俺に付きまとうつもりだ。」
「だって義勇さん、一人だったらご飯も食べなさそうだから、ほって置けませんよ。…はい、おかわりもありますから、たくさん食べてくださいね。」
そういって、山盛りに盛られた茶碗を義勇にさしだした。
(やっぱり…お母さん。)
義勇はそれを受けとり、箸で口に運んだ。
「旨い…。」
「ありがとうございます。」
義勇の素直な感想に、炭治郎は顔を綻ばせた。
(……可愛い。)
「ほら、ご飯粒付いてますよ。」
そう言うと炭治郎は、義勇の頬に付いたご飯粒を取り、その指をペロリと舐めた。
「…炭治郎。(…きゅん。)」
もう二・三日くらい付きまとわれているが、優しいし、気を使ってくれるし、面倒も見てくれるし、ご飯も美味しい…。
「俺…もう、炭治郎でもいいかな。」
義勇は思わず、そう呟いていた。
ー疑惑 完