第24章 疑惑
ー 修行時代
挟霧山の修行場で陽華達三人は、鱗滝と一対一の稽古を行っていた。
師匠によって早々に投げられ終了した陽華と義勇は、先ほどから睨みあったまま動かない、鱗滝と錆兎の稽古を、じっと見詰めていた。
「すごいな、錆兎。鱗滝さん相手にあんなに粘れるなんて…。」
親友の勇姿を誇らしげに見る目は、キラキラ輝いていた。
「私は、義勇も頑張ってたと思うけどな…。」
陽華がそう言うと、義勇は首を横に降った。
「俺なんか全然駄目だよ。錆兎は頭もいいし、状況判断も早くて根性もあるし、それに男らしくて…、同い年なのに本当に尊敬する。」
陽華は錆兎のことを嬉しそうに語る義勇を見て、また義勇の『錆兎自慢』が始まったと呆れた顔をした。
しかし呆れてはいたが、自分を謙遜し、友を立てる義勇の優しいところも大好きだった。
「もう、わかった!本当に義勇は錆兎のこと好きだね。」
そういって、義勇にニコッと微笑み掛けた。
その瞬間、義勇は顔を赤く高揚させ、陽華から視線を反らした。
この時の陽華は、義勇はいつもの錆兎バカなところをからかわれて、恥ずかしくなったんだと思っていた。
「でも違ったんだ。…あの時の義勇の反応、そういうことだったんだ。」
(…いやそれどころか、私が知らなかっただけで二人はもう…、そういう関係だったんじゃ…、)