第24章 疑惑
「「冨岡(さん)と、別れたーーー!?」」
陽華の思いがけない言葉に、天元としのぶの声が重なった。
ここは宇膸邸。柱稽古後、飲みたい気分だった陽華は、しのぶを連れて天元の屋敷に来ていた。
酒も回り、いい頃合いになった頃、陽華は天元としのぶに近況を報告した。
「なんで、そうなった?」
思ってもみない結末に天元は驚き、陽華に問いかけた。
「だって向こうは私の事、好きだから、一緒にいてくれた訳じゃ、なかったんだもん。」
そう言って、悲しそうに机に突っ伏した陽華を見て、天元が首を傾げた。
「いや…、そんなはずはない。(じゃなんで、俺にあんなに牽制してきたんだ?)」
「私も…、冨岡さんは陽華のこと好きだと思ってました。」
しのぶも天元の意見に賛成だった。
陽華はチラッとしのぶと天元の方を見ると、刀鍛冶の里であったことを報告した。その話を聞いて、みるみる天元としのぶの顔色が変わった。
「はぁ?ヤッてる最中に好きだって言ったら、動揺して黙り込んだぁ?」
「とーみーおかぁぁぁ!!」
黙って聞いていたしのぶが、突然義勇の名前を叫び、傍らに置いた刀に手を取り、立ち上がった。
「しのぶ、落ち着いてっ!」
「最近、人間にも良く効く、素敵な毒の調合に成功したんです。とことん最後まで苦しみ抜いて、最後は熱で全身が原型を留めないほどに腫れ上がって、死ぬんです。ちょっと冨岡さんで試してきますね。」
そう言って、部屋から出ていこうとするしのぶを止めようと、陽華はその腰に抱きついた。
「待って、もういいのっ!」