第20章 蛇柱
陽華の言葉に、小芭内は呆れた顔を浮かべた。
「…やはり、お前と一緒にするな。俺は相手にそんな無理強いはさせない。だが…、」
小芭内は、チラッと陽華に視線を向けてこう言った。
「お前がただ冨岡を盲信して、みんなに笑顔を振り撒いてるだけの偽善者じゃないことが解って、…少し見直した。」
陽華は小さく笑い、小芭内に「それはありがとう。」と言った。
その時だった。
遠くの空から、一匹の鴉が鳴きながら、こちらへ向かってきた。
「緊急招集!緊急招集!」
「花子!」
陽華の鎹鴉だった。鎹鴉の花子は陽華の肩に停まると、新たな任務内容を告げた。
「吉原遊郭デ上弦ノ鬼確認!只今、宇髄天元ト数名ノ隊士ガ交戦中!!伊黒小芭内、氷渡陽華両名ハ、直チニ応援ニ行カレタシ!!」
「上弦!間違いないのか?」
小芭内が陽華の鎹鴉に問いかけた。
「上弦ノ陸!上弦ノ陸!」
花子の言葉に、小芭内はわずかに微笑んだ。
「ようやく姿を顕したな。吉原なら、ここから近い!…陽華、行くぞ!」
「あれ……名前、」
急に下の名前で呼ばれ、キョトンとする陽華に、小芭内は照れたような視線を向けた。
「なんだ?」
「ううん、なんでもない!行こ、小芭内!」
そうして二人は、月の光が照らす歩道を走り出した。
ー蛇柱 完