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【鬼滅の刃】水魚之交

第17章 炎柱





杏寿郎の訃報が届いたのは、それから数年後のことだった。

義勇とともにいた陽華は、鎹鴉の言葉に表情を曇らせた。

人の死は慣れている。ましてや、柱であれば、人を守って死ぬのは当たり前のことで…全員その覚悟を持って挑んでいる。

「そう。杏寿郎は全員守ったのね…。炭治郎達、隊員も…全員。…やっぱり、杏寿郎はすごいね。」

「あぁ、責務を全うしたんだろう。やつこそ真に、柱たり得る漢だった。」

表情一つ変えずに、義勇は答えた。

「…うん、そうだね。」

小さく頷く陽華の頬を、静かに涙が伝った。

「…泣くな。それは責務を全うした柱にとって、屈辱的なことだ。」

義勇が静かに言うと、陽華は表情を歪め、俯いた。

「…わかってる、わかってるよっ!…でも、悲しいよ…。」

耐えるように、歯を食い縛りながら陽華が苦しそうに叫んだ。その身体を義勇はそっと抱き寄せた。

「俺達だって、いつそうなるかはわからないんだ。明日には煉獄の隣にいるかもしれない。何の意味も成さない死を迎えるより、やつは幸せだったろう。」

そう言って義勇は、陽華を抱く手に力を込めた。

「…上に立つ者は、絶対に弱さを見せてはいけない。今だけ、俺の前だけだ。」

「…義勇、ありがとう。」



そのまま暫く、陽華は義勇の胸で静かに泣いた。



ー 炎柱 完
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