第16章 ※初恋
報告のため、鬼殺隊本部に来た陽華は、道の先に音柱・宇髄天元と炎柱・煉獄杏寿郎を見掛けて声を掛けた。
「天元さん、杏寿郎!」
「おお、陽華!…なんか、しばらく見ないうちにまた綺麗になったんじゃないか?」
「えー、本当?」
天元の言葉に嬉しそうに微笑んだ。そんな陽華の姿を見て、天元は顔をニヤニヤ顔させた。
「女を知って、ヤリたい盛りの冨岡に毎日愛されてますってか?」
「やだー、恥ずかしいー!」
そう言いながら、陽華は恥ずかしがって、思い切り天元の腕を叩いた。
「んむ、なんの話だ?」
突然、杏寿郎の曇りのない清んだ瞳で問いかけられ、陽華は思わず瞳を反らした。
「…うう、杏寿郎の瞳が真っ直ぐな目が、穢れた私には眩しい…。」
杏寿郎のキラキラ光線を、眩しく思っていると、天元が話しかけて来た。
「陽華、今日はもう休みなら、うち来るか?嫁達もお前が来ると喜ぶ。」
「おもちゃにされてるだけな感じがするけど。…でも、義勇は任務行っちゃったし、行こうかな?杏寿郎は?」
「俺は任務だ。」
「そっか、気を付けてね?」
「さっき、お舘様に言われたが、お前の弟弟子も一緒だ。」
「炭治郎が?それはお世話になります。本当にいい子だから、宜しくね?」
「あぁ、俺の継子にしてやろう。」
「いや、そんなこと頼んでないから。」
「ワハハッ。」
そう、楽しそうに笑う杏寿郎に、陽華はふと思い出したことを聞いた。
「そうだ、杏寿郎!今度、杏寿郎の実家に、歴代炎柱の書を見せて貰いに行くから、連絡しといてね?」
「そういえば、前に約束したな。了解した!父上と弟に手紙を送って置く、いつでも暇な時に行くといい。」
そう言うと、杏寿郎は眩しい優しい笑顔を浮かべた。
「では、行ってくる。またな!」
「うん、またね?」
陽華が笑顔で返すと、杏寿郎は背中を向けて去って行った。陽華はその後ろ姿に小さな胸騒ぎを感じ、杏寿郎を呼び止めようとして、やめた。
(杏寿郎なら、心配ないよね…。)
ー 初恋 完