第2章 異変
あの旅館での告白から、数ヶ月。
柱である陽華達は、その忙しさの為、ちっとも会えずにいた。それでも手紙を出せば、ちゃんと返事もくれるし、恋人ごっこはそれなりに続いていた。
そんな時に来た、半年に一回の柱合会議。陽華は義勇に久々に逢える嬉しさで、心を踊らせていた。
ー鬼殺隊本部ー
お館様の屋敷に向かう道の先に、陽華は柱同期の風柱・不死川実弥を見つけて、小走りに近寄った。
「実弥、久しぶり!」
「あ?…おまえかァ。」
声を掛けられた実弥は、不機嫌そうに振り返ったが、陽華の姿を見ると、少し顔を和らげた。
時を同じくして柱になった実弥とは、柱になる前から、任務で一緒になることが多く、そこそこ信頼の置ける関係だった。
陽華は、実弥の横に並んで歩きながら、突然、実弥の身体を点検するように見回した。
「ンだよっ!」
その視線にイライラした実弥が、陽華を睨みつけた。そんな態度の実弥を気にもせず、陽華は満足そうに頷くと、こう言った。
「よし!傷は増えてないねっ!」
その言葉に、実弥がチッと舌打ちした。
「…最近は力も着いてきたから、稀血に頼らなくても、気配でわかんだよ!」
「うんうん。匡近も喜んでるよ。」
「うるせェ!」
実弥は不機嫌そうに答えたが、顔は怒ってない。実弥とって陽華は、出してほしくない名前を出しても許せる、数少ない人間の一人だった。
「最近はどう?」
「変わらねぇよ。出てくる鬼は雑魚ばっかでよォ。上弦と殺りあえるなら、変わってくんだろォけど。」
「義勇と同じ事を言ってる。」
「冨岡の名前なんか、出してくんじゃねェよ!!」
実弥がイライラしながら毒づく。どうやら本当に、出してはいけない名前だったようだ。
それでも陽華は、不機嫌な顔で舌打ちする実弥が面白くて、笑ってしまった。
その姿に、実弥は反論しようと口を開きかけたが、違うものに気を取られた陽華によって、遮えぎられた。
「あっ天元さんだぁ!…実弥、先にお屋敷行ってるね?」
音柱・宇髄天元の姿を見つけ、陽華は実弥に小さく手を振ると、走り去っていった。
「たくっ、相変わらず騒がしいやつだなァ。」
その後ろ姿を見て、実弥はそう呟いた。