第3章 小さな天使 (姫宮 桃李)
「アリス~☆」
まだ声変わりしていない男の子の甘やかな天使のような声が響いた。
ぎゅ~!っと私の腕に抱き着いてくる子は一年生の姫宮 桃李くんだ。
天使のような外見とは裏腹に、中身は小悪魔な金持ちの子息なのだが自身の外見の魅力を最大限に活用する術を心得ているため愛らしいとしか表現できない。
声と同じく天使のような男の子が「えへへ~♪」と可愛い声で私を見つめていた。
『おはよう、桃李くん』
「おはようっ☆アリスを見かけたから走ってきちゃった」
胸元に手を当て、小さくはぁはぁと呼吸を整える彼はまるで天使であり子兎の様だ。
「一緒に行こうっ♪」
手を絡めて歩き出す彼は背丈が小さくて女の子にしか見えない。丈があっていないのかわざとなのか、袖が余っていて、指先だけがちょこんと覗いている。
つぶらな瞳に可憐な唇。ふわふわ艶々の桃色の髪。
その愛らしい天使を見つめていたら桃李くんの手が私の顔の前で左右に動いていた。
「どうしたの?アリス?ぼーっとして」
『え………。あ、ごめんね』
「も~!もしかして眠いの?寝坊助さんだなぁ、アリスは♪」
えへへ~♪と微笑む彼に私は頬を赤らめた。可愛すぎる。