第2章 純粋少女 (鳴上 嵐)
「あらっ?アリスちゃん駄目よ。唇が乾燥してるわ。ちゃんとリップを塗らなくちゃ」
アタシは鞄の中からリップを取り出して、アリスちゃんに近づいた。
男子校の中に転校してきた唯一の女子生徒。小柄で色白で髪がふわふわ艶々でアタシの持っていないものを全て持っている子だ。
「こっち向いてアリスちゃん♪」
彼女の顎に手を置き顔をアタシの方へ向かせると彼女は目を見開き、顔を真っ赤にさせて小さく声を出した。
あぁん、可愛いわねぇ……♪彼女の表情はいつも魅力的で可愛くて見ていて飽きない。女の子ってずるいわよねぇ。
こんなに可愛くて男性にも女性にも愛されて。あぁ、アタシもアリスちゃんみたいになりたかった。なんて思ってしまう。
アリスちゃんのカサカサの唇にリップを塗ると『んっ…』と声が聞こえてくる。
その声を聞いて一瞬胸が大きくなった気がした。
「はいっ♪いいわよォ♪」
『~~~っ』
彼女の唇にリップを塗り終わり笑顔で声を掛けるとアリスちゃんは顔を真っ赤にさせながら唇に手を当て視線を外しお礼を言う。
『・・・あ、・・・ありがとう・・・ございますっ』
「どういたしまして♪冬場は乾燥しやすいから気をつけなくちゃ駄目よ?」
『は・・・はい』
「アリスちゃん?女の子なんだからもっと自分の身体を大切にしなくちゃ。特に肌や唇は!」
『あ、はいっ。・・・ご・・・ごめんなさい』
申し訳なさそうに返事をする彼女を見て、苛め過ぎたかしら。と思った。反省しなくちゃ。
………アタシは嫉妬しているのだ。本物の女の子に。