第1章 弱い僕 (天祥院 英智)
『具合どうですか…?』
声が聞こえた方に視線を移すとそこには夢ノ咲学院の制服を着た女性がいた。アイドル科ではありえないはずの女子制服だ。彼女は心配そうに僕を見つめていた。
「あぁ……心配をかけたね」
『いえ‥……』
点滴が繋がれた哀れな自分の身体に目をやる。どうやら、また倒れてしまったみたいだね。
せっかく彼女にも手伝ってもらったライブだったのに。すまなかった。と頭を垂れようとしたら、彼女の手が僕の手に触れてきた。暖かくて柔らかくて色白で、でもどこか力強さを感じる彼女の手が。
『……っ、謝らないで下さいっ』
あぁ、彼女は知ってしまったんだろう。僕の身体のことを。知らないでほしかったのにな。どうして倒れてしまったんだろうか。
彼女の手は小さく震えていた。視線を合わせようとすると彼女の目から涙が零れ落ちていた。
「アリスちゃんは……優しいね」
小さく微笑み、彼女の頬に手を触れさせると彼女の身体が小さく震え、首を左右に振る。
「優しいよ、こんな僕の為に泣いてくれる……」
『……怖かったんです』
ほんの刹那、僕と視線を交わしてくれた。涙で濡れて目元が赤くなっていた。
「………ごめんね」
心配をかけてごめんね。真面目で優しくて思いやりがあって純粋で天使のような子だ。
僕は彼女に出会えて幸せだった。巡り合えた奇跡を感謝しよう。