第1章 彼とうまいもの
夕御飯を済ませお風呂に入り、ゆっくりテレビを見ていると電話が鳴った。
画面を見ると予想外な人物。
左馬刻くんからだった。
「もしもし?」
『よう』
「どうしたの?」
『無事に帰れたかよ』
「え?うん、もう家だけど……なんで?」
『あ?なんでじゃねーよ、お前乱数の車に乗ってただろ』
何で知ってるの??
『駅に着いたらたまたま見たんだよ、お前らが手繋いでんの……』
「お前ら知り合いだったのか」と不思議そうに聞いてくるものだから経緯を説明した。
『お前は学ばないタイプか?知らねぇやつにノコノコついていくんじゃねぇよ!』
急に怒鳴られてスマホを思わず耳から離した。
「そんな怒らなくても!知らない人ってわけじゃなかったし……」
『は?お前はポンコツか?黙って銃兎に送られてれば良かったんだよアホ。変な気使いやがって』
うっ…そう言われれば確かにそうだったかもしれない……。
何?変な気って。
『乱数に何か言われたか?』
「え、別に何も……連絡先は渡されたけど」
モデルの話は黙っておこう。
『絶対連絡すんなよ、アイツには関わるな。碌なことねぇから』
「う、うん」
『何も無かったならいいわ、切るぜ』
心配してくれたの?
「待って!左馬刻くん!」
『んだよ』
「銃兎くんから聞いたんだけど、犯人見つけてくれたの左馬刻くんなんだってね。今日お礼言いたかったんだけど会えなかったから……ありがとね」
ん?返事がない。
画面を見るけど通話は切れていなかった。
「聞こえてる?」
『おう』
「今度お礼させて」
『なんだよ、雪でも降んのか?』
「失礼な!ご飯でも奢るよ」
『うまいところ連れていけよ』
「探しておきます」
また連絡すると言って電話は切れた。
左馬刻くんって結構優しい人なんだと今さら思う。
話せば分かる人なのかも。
おいしいお店探してみよう。
ヨコハマに行くことが楽しみになってきた。
戻ろうかな、ヨコハマに。