第1章 彼とうまいもの
結局お茶を理鶯に買ってもらい自販機を背にして私と銃兎くんは椅子に座った。
理鶯は座らず私を見下ろしている。
お茶を飲んで落ち着いたところで、私から口を開いた。
「今から三人で集まるんでしょ?私はそろそろ……」
「送りますよ、トウキョウまで。左馬刻はヨコハマ駅にいると連絡が入っていたので後で拾えば良い」
「じゃあお言葉に甘えて……、でもヨコハマ駅までで大丈夫。左馬刻くんを待たせるのも悪いし、電車で帰れるから」
「左馬刻のことなど気にしなくていいのに。わかりました、駅まで送ります」
「小官が家まで送ろう」
「理鶯お前帰ってこない気だな?」
「フフ、理鶯はダメ」
理鶯が少しムスッとした表情をした。
「着きましたよ」
「ありがとう送ってくれて。左馬刻くんはもう来そう?一言お礼を言いたいのだけど」
「あのバカ……、左馬刻はまだもう少しかかるみたいです」
銃兎くんが呆れたように言う理由がわからないけど、時間がかかりそうなら仕方ない。
銃兎くんに再度お礼を言って、ドアを開けて外に出ると理鶯も降りてきた。
「本当に一人で帰れるか?」
「何歳だと思ってるの?そんなことより理鶯、二人に迷惑かけちゃダメよ。森の中でちゃんとやっていけてるの?」
「心配ない、今度姉貴も来て欲しい」
何を振る舞われるのか怖いな。
それにしても、理鶯も28歳なんだし心配しすぎか。
もしかして弟離れできてないのは私の方なのかも。
「じゃあね、何かあったら連絡して」
「うむ、姉貴もな」
理鶯に手を振って、駅の中へ向かった。