第2章 幻影シンガー
授業終わりに、あたしは今まで話したことのないクラスメイト達から尽く声をかけられた。
でもそれらをすべて、『人間ごときに話しかけてきてもいいんですか?』の一言で黙らせる。
「失礼、先ほどは素晴らしい歌をありがとうございました。」
『…人間ごときに話しかけてもいいんですか?』
「はい、人間でも魔法士でも我がオクタヴィネル寮は慈悲の寮ですので分け隔てはありません。」
同じクラスにいたこの長身男
物腰は柔らかいのにどこか抜け目のない左右で色の違う目がどうも嫌な感じがした。
『…何か、御用ですか?』
「いえ、先ほどの歌声が非常に見事でしたので。また個人的に歌っていただけないかと…」
『…どうしてついさっき初めて話したばかりのあなたに安売りしないといけないのですか?』
「もちろん、タダでとは申しません。よろしければ僕の寮にあるラウンジにいらしていただいて…」
『だから、名前も名乗らない人に安売りするつもりはないです。』
長身の男の言葉をすべてシャットして、あたしの長いポニーテールを振り払って廊下を歩いていく。
***
「ふふふ、簡単には手中に入ってはくれないようですね。」
「ジェイド~何してんの?」
「あぁ。異世界の歌姫を口説いてみたのですが…」
「あぁ~オレのとこにも聞こえてきたよ。なんか人魚姫でもいるのかと思った~。あの白いしっぽの?」
「はい。歌声だけでなくあの髪も非常に魅力的ですね。」
「あはっ。オレもあの白ウナギちゃんと話してみたいかも~」
彼女が立ち去った後、彼女と話していた男と同じ顔の男が現れて去っていく彼女の姿を互いに対になっている金色の目で見つめていた。