第5章 深海スターブ
「アイちゃん!!アイちゃん!!」
ユウの声が聞こえたと思い目を覚ますと、目の前にはユウだけでなくエースやデュース、ジャックが心配して顔をのぞかせていた。
「大丈夫…?」
『――――…⁉』
ユウの名前を呼ぼうと口を動かしたが、自分の口から声が出ていなかった。慌てて口をふさいで小さく『あー』と声を出そうとしても全く・・・あたしは身体が震える感覚がした・・・あたしの・・・声が・・・
『――――…ッ――――…!!』
「あなた達の力も僕にくださいよぉ!!!」
無言のまま涙を流していると、アズールの叫び声が聞こえてきた。今度はジェイドとフロイドがアズールの前に立ちふさがっていて何とか彼を説得しているようだった。フロイドがあたしの目の前で「今のアズールって昔のアズールよりずっとダサいんだけど」という言葉を発していた。
「あ~~~~~そうですか。」
さっきまで無心で他者から力を奪っていたアズールだったが、フロイドの言葉で何かが吹っ切れたようだった。
「どうせ僕は1人じゃ何もできないグズでのろまなタコ野郎ですよ。だから、もっとマシな僕になるためにみんなの力を奪ってやるんですよ。美しい歌声も、強力な魔法も全部僕のものだ!!よこしなさい!すべてを!!!」
と、彼が叫ぶと…彼の周りをまた黒い靄が覆い始めた。
しかし、それはさっきのものとは違った。でも覚えはあった・・・あれは、リドルやレオナの時と同じ・・・オーバーブロッドだった。
「…小エビちゃん、ウナギちゃんをお願いね」
フロイドがユウにそういうとジェイドやレオナ、ラギー達と共にオーバーブロッドしたアズールと共に彼を正気に戻そうとしていた。
***
そして、彼らの力によって、アズールがオーバーブロッドから解放された・・・。