第5章 深海スターブ
『えっ…んぐっ!?』
アズールが接近してきたと思ったら、突然彼に口を塞がれた。
レオナとラギーが気が付いたが、あたしの口をふさいでいない方の手で魔法を放とうとしていたからか、迂闊に近づけないようだった。
その時、リーチ兄弟が「アズール!!貴方何をしているのです!」とどこからか戻ってきたのだ。ジェイドがすぐにアズールに声をかけるがフロイドの方はアズールに口を塞がれているあたしを見つけて低くうなずいた。
「アズール…ウナギちゃんなにしてんの?」
「ハァ…ハァ…!!アイちゃん!!!」
「何って、僕はこの女から声を奪うんですよ、この女の…《人を魅了し操る声》を!!!」
アズールが叫ぶが、誰もがその言葉を理解できなかった。
さらにアズールは言葉をつづけた。
「僕自身最初は気にならなかったのですが、彼女の声はあまりに魅力的でそれに依存する者も多い。さらにフロイドやリドルさん…さらにはレオナさんをも魅了するほどだ。
私はその声を録音し調べてみた。すると、彼女の声は聴き続ければ相手を操る力があると分かった。それは一種のユニーク魔法も同然の力だと…!!だから僕はずっとその声が欲しかった。僕の話術と彼女の声があれば今以上に他者と契約ができると!!」
高笑いをしながらそんなことを言いだす。
自分自身も声にそんなことができるなんて思ってもみずに意味が分からなかった。すると口をふさいでいるアズールの手が光を帯び始めた。
「海の魔女と取引した人魚姫のように…あなたの声をいただきます!!」
彼がそういうと、あたしはのどが焼かれるような感覚に襲われた。あまりの痛みに大声を出していたがだんだん自分の声が聞こえなくなって・・・あたしは意識がなくなった。
その瞬間、「ウナギちゃん!!!!」という声が聞こえた気がした。