第5章 深海スターブ
「全く、君という人は…あのリーチ兄弟に喧嘩を売るとは…無謀以外何物でもないよ。」
『うん…なんかクルーウェル先生にもさっき同じように注意された気が…』
「仮にも君は女の子なのだからあまり無茶はするんじゃないよ?」
仮にも…という言葉が少し引っかかったけど、あたしはリドルの言葉にかなり安心した。あたしでも心配してくれる人がいるのだと。
『ありがとね…リドル』
「…あぁ」
リドルの顔を見ると以前までの怪訝そうな顔ではなく穏やかな顔で笑ってくれたからかあたしはそのまま眠ってしまった。
***
彼女が安心したように眠ってしまったのを見て、僕はため息をついた。やはりこうやって見ても彼女は普通の女子生徒のようだった。
「…君は、どうして君が…」
「おや、先客でしたか。」
「…アズール!」
保健室に入って来たのは、オクタヴィネル寮の寮長のアズールだった。エース達が言うに彼が監督生と契約していると言っていた。
「何しに来たんだい?」
「いえ、アイさんが怪我をされたと伺ったのでお見舞いに」
「君の寮の生徒にやられたのだが?」
「もちろんその件についての謝罪も含めてですよ。」
笑顔でそう答えるアズールだったが、彼がそんな用件だけでわざわざ足を運ぶわけがない・・・それはリドルにもすぐに分かった。
「…それで?本当の目的は何なんだい?」
「…何のことでしょうか?」
「君が利益にないことに対して行動するとはとても思えなくてね。彼女に何をする気だい?」
リドルがアズールを睨むと、アズールはまたニヤニヤと笑い始めた。
「…あなたでしたらすでにお分かりなのでは?」