第4章 狂恋ラビリンス
あたしは倒れる一歩手前で彼の事を受け止めたが・・・
もうすでに寝ているこの男を連れていけるほどの力は持ち合わせていなかった。
『ちょっと…!!起きろったら!!』
「ん~…マレウス…様…」
『マレウスサマはいいから!!早く…』
「おやおや、こんなところにおったのか。シルバー」
と、木の下から一向に動けないあたしの頭上から声がした。
見るとあたしよりも小柄な人が木の枝から頭を下にぶら下がっていたのだ。あたしは彼に覚えがあった。
『あ、あなた確かディアソムニアの…』
「おぉ、お主はこの寮の美しい声と評判の娘子じゃな。噂は聞いておるぞ」
『あ、はぁ…』
「くふふ、困ったような顔じゃな。ほれ、その抱えているシルバーはわしが預かろう」
と、その小柄な体のどこにそんな力があるのか彼はあたしが全身を使って抱えている男をいともたやすく担ぎ上げてしまった。
「では世話をかけたな娘子、あまり外にいると身体に障る。しっかり温めるのじゃぞ」
と、簡単な捨て台詞だけを残してその人たちは消えてしまった。ディアソムニアはあまり絡んだことがないから何とも言えないけど・・・
きっと友達にはなれない気がした。
***
さすがにこの時間は誰もいないようだ。
自室に戻り、いつも使っているドレッサーにある予備の髪留めを手にして鏡の前に立つ。長い銀髪をまとめて脳天より少し下で結ぶ。
いつもの髪型が出来上がって授業があるから戻らないとと、一瞬だけ思ったが・・・自分のベッドを前にしちゃうとどうしても寝たくなるよね