第1章 プロローグ
――――♪
―――――――♫
高校2年生のあたし、日向愛羅(ひゅうが あいら)
得意科目は、音楽。それだけは小さい頃から得意だった。
「はい、日向さん。相変わらず完璧ですね。どうぞ席にお着きください。」
『・・・。』
音楽の先生にお辞儀をして、そのまま音楽室の席に着く。
完璧に歌えたはずなのに、拍手の1つもない。
あるのは、妬みの小言ばかり
「やっぱ日向さんって感じ悪いよね…」
「ねぇ、そりゃ歌は上手だけど…」
「歌えて当然っていう涼しい感じがウザい…」
「アレで本当に歌だけなら虐め甲斐があるのに、他の教科も基本は平均以上ってさ…もうウザすぎだよね。」
と、完全に妬みとしか思えない小言が常にあたしの後ろにはある。まぁ、気にしてないし友達がいないのは中学からだから慣れた。1人の方が、気軽に歌えるし気をはらなくて済むから楽だからね。
***
「はい、いいですよ日向さん。今日のレッスンはこれまでとしましょう。」
『ありがとうございました。』
その日も声楽教室に通っているあたしは、先生に頭を下げて家の近所にある教室を後にする。
1人で歩く夜の道を得意の鼻歌を交えながら歩いていく。
すると・・・
『ん?』
背後から、何かガラガラという音が聞こえてきた。
それに、パカパカという・・・よく聞くと、馬の蹄の音のような・・・
『…え?』
その音が気になって近づいてくる音を待っていると、それはこの日本には不釣り合いな洋風な馬車で、それはなぜかあたしの横で止まった。
御者を見てもなぜかよく見えずに、目の前に止まったキャリッジの扉が開いた。誰も乗っていない馬車の中に、あたしはなぜか引き付けられる様にその馬車に乗った。
久方ぶりに、ちょっと興味がそそられたから・・・